読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

旅人を待つ人

「今居る場所を愛せなければ、何処に行っても同じ。」

 何も無いこの町で子供の頃からずっと言い聞かせられていた言葉。深い意味なんてわからなかったけど、気づいたら何処か遠くへ行くのが億劫な性格になっていた。 

大人になってもそれは変わらないし、別に異論なんて無いのだけれど、風の様に世界中を駆け回る人達がこの町を訪れる度、内心穏やかじゃ無い自分がいた。

 「此処を愛せないから、何処にも行けないんじゃないか?」って。 

旅人はいろんな話を聞かせてくれるし、この町のことも素敵な町だなんて言ってくれるから、無い物ねだりだと自分に言い聞かせてその場をやり過ごす。

 この町は私が守っていくみたいな使命。 誰が課した訳でも無いのだけれど、そういうことにした。連れ去ってくれようとした人もいたのだけれど、私の脚が大樹の様に根差し動かなかったのはそういう訳だった。 

今日も明日もずっと見送り続ける。 二度と帰ってこないことも分かってる。

 この世界を愛せるのは、いつになるのだろう? 

見飽きた風景の中、 知らないことだらけの中、 ただ旅人を待つばかり。